ヨナが投げ込まれると荒れ狂っていた海が静まりました。海の藻屑と消えた我らがヨナはどうなったのでしょう。魚のおなかの中で生きているようなのでまずは一安心です。「私を海に放り込むがよい」などと大見得を切ったものの※体が宙に浮いた瞬間彼は大後悔したと思います。海に落ちて沈んでいきながらどんなに苦しくて恐ろしかったでしょうか、想像に余りあります。水草が頭に絡みついたところで多分意識を失って―。気づいたら真っ暗闇の中にいました。一瞬ここは陰府かと思ったけれど呼吸しているし手で顔に触ると温かい。どうやら自分は生きている…。そこが魚のおなかの中であったことが分かったのは陸地に吐き出されてからでしょう。
全き静寂の中でヨナは振り返ります。聖書には「ヨナは…自分の神、主に祈りをささげて」とあります。神さまとの対話である祈りを続けていくうちにヨナは落ち着き、一連の出来事を自己中心的な視点からでなく客観的な第三者の目線での見直しを始めます。「嫌な命令を与えられれば誰でも逃げる。タルシシュ行きの船に乗れたのは幸運だった。海の大荒れは私がなんとかしよう。悲劇のヒーローとして海に飛び込むのだ。苦しみの原因はすべて神さまにある。ひどい目にあったのは神さまのせいだ。」その確信が崩れていきます…。苦しみの絶頂で無我夢中で助けを求めたのは私が背いた神さまの名前。そんな者を神さまは見ていてくださる。俯いていたヨナは顔を上げ神さまのほうへと向きを変え始めるのです。