アブラムは夢の中で暗黒の恐怖に悶えながら神さまの約束を聞いたのでした。それは、今後イスラエルが経験するであろう異邦にての艱難、そしてそこからの解放と復興の約束でした。寄留者としての苦しみは四百年、解放とカナンへの帰還は四代目になってから。この言葉から、神さまの約束の成就は人ひとりの一生を遥かに超えて成っていくものであることが分かります。と言うことは「人の人生をこの世だけ」と思ってしまうなら約束の成就は見ることが叶わない訳です。

 キリスト者の信仰が、永遠の命を信じるものであればこそ神さまの約束の成就を信じることができる。地上に生きた年月を越えて、やがて必ず成就する約束をその目で見ることになるのです。

 神さまはアブラムに教えて下さいました。

あなた自身は、長寿を全うして葬られ、安らかに先祖のもとに行く。

 この言葉には、アブラムに対する神さまの限りない慈しみと憐れみが満ち満ちています。永遠の命という言葉は新約聖書にしか出て来ませんが、この世にて肉体が滅びた後も、自分は続いていく、神が導いてくださる、という信仰はあった。

 アブラムが信じたのはこの信仰でした。だからこそ神さまはアブラムに彼の死後を語られたし、アブラムはこの言葉によって大いに慰められ、希望を持つことができたでしょう。

 ヘブライ書の記者はこのことを記しています。

この人たちは皆、信仰を抱いて死にました。約束されたものを手に入れませんでしたが、はるかにそれを見て喜びの声をあげたのです。11:13より抜粋