パウロはカイサリアに護送され総督の前で弁明する機会が与えられました。一方パウロの暗殺の陰謀に失敗したユダヤ人たちは飲み食いしないと誓ったために餓死…なんてことにはなりませんでした。なおも執拗にパウロを追って大祭司たちがカイサリアへとやって来た。そして弁(護)士を雇って総督にパウロを告発したのでした。罪状は騒乱罪!?神殿侮辱罪!?新宗教設立罪!?そんな罪があるのかどうか、とにかくいい加減な告発をしたのです。俄かに雇われた弁士にはこじつけの罪状を正しく説明できるはずもありませんでした。最後には「どうか閣下ご自身でお調べになって」と投げ出したのです。総督は千人隊長からの添書に目を通していたこともあってか、凡その事を把握していたと思われます。発言を促されて立ち上がったパウロ。ここからは彼の独壇場でした。
告発の一点一点について端的に明解に弁明を進めていきます。元々パウロはユダヤ人が訴えるような罪は犯していません。エフェソから帰還した彼はまず離散ユダヤ人の慣例に従って神殿で身を清めました。彼自身はその必要を覚えませんでしたがユダヤ人の手前、彼らの気が済むよう敢えて行ったのです。他にも請願者の費用の負担をするなどユダヤ人として律法も神殿も大切にしている、そのアピールに努めたのです。
しかしユダヤ人たちはパウロを何とかして陥れ、亡き者にしてしまいたい。憎しみという感情で結束したのです。感情の一致は妙な興奮と団結を生みます。そして転げ落ちるように道を逸れていくのです。