トルコ半島西端の港街トロアス。第三次伝道旅行で陸路をとってアジア州に入ったパウロは3年という長期間をエフェソで過ごし教会を立ち上げました。そこからヨーロッパに渡りマケドニア、アカイアを経て再びトロアスへとやって来ます。ここでのエピソードが先週のテキストでした。パウロの説教を聞いていた若者が眠り込み掛けていた3階の窓枠から下へ落ち死んでしまったのです。しかし若者はパウロの祈りによって生き返り、目撃者たちは大いに慰められたのでした。
今朝のテキストは、エルサレムへと急ぐパウロの旅の順路を報告するだけの短いものです。しかし短い1節1節にも意味が込められておりパウロの書簡類と並行して読むことで状況が察せられたり情景が活き活きと浮かび上がってきたりします。トロアスから今回の到着地ミレトスまでは直線距離でおよそ200㎞。ルカによればトロアスから海路をとると多島群をよけつつミレトスまで3日かかるとのこと。しかしパウロはトロアスで一行と別れ単独徒歩でアソス(トロアスの南32㎞)に向かったのでした。そこにどんな意味があるのでしょうか。またルカは「エフェソに寄らないで」と書いています。ところが次週のテキストの最初17節にはパウロが人をやってエフェソの長老たちをミレトスに呼び寄せたと書かれているのです。次回から3回に亘ってお話するパウロの決別説教は使徒言行録の山場のひとつです。エフェソ教会の長老たちに語った言葉は現代の信仰者に語られた言葉でもあるのです。