今朝取り上げる物語は、19世紀のアイルランドに生きた詩人で劇作家、オスカー・
ワイルドの「幸福の王子」です。この世の悲しみや苦しみを知らない王子は夭逝し、
今度は宝石や金箔で飾られた豪華な像となって生き始めます。街の高い円柱の上に立
てられたことで、人々の貧困や悩みを見、子ども達の飢えや病を知ることとなり、心
を痛めていました。ちょうどその足許に、エジプトへの渡り鳥の一団からはぐれた燕
が舞い降りてきます。王子は燕に頼んで自分の体の宝石や金箔を、困窮している大人
や子どもたちに届けてもらいました。人々は笑顔になり幸福になっていきましたが、
王子はみすぼらしい灰色の塊となり、ついに取り壊されてしまいます。燕も寒さで死
んでしまいます…。他者と共に生きること、他者のために生きること、他者を愛する
こと。尊い行為の陰に大きな犠牲が払われていることをこの物語は教えてくれます。
「彼は自らの実りを見、それを知って満足する。」イザヤ53:11a
しかし尊い犠牲は永遠に忘れ去られたのではありませんでした。二つに割れた王子の
鉛の心臓と燕の死骸は、この街で最も尊いものを二つ探してくるようにとの命令を受
けた天使によって、神さまの許へと運ばれていきます。燕は天国の庭で永遠に歌い続
けるものとなり、王子は神さまの黄金の街でずっと神さまと共にいるものとなったの
でした。幸福の王子の真の幸福は、ここにあったのでした。
「それゆえ、わたしは多くの人を彼の取り分とし、彼は戦利品としておびただしい人
を受ける。」イザヤ53:12a
「喜びなさい。大いに喜びなさい。天には大きな報いがある。」マタイ5:12a