トロアスから出発しミレトスに到着するまでのパウロの行動は謎だらけでした。彼は途中のアソスまでルカたちを船で行かせ自らは徒歩でやって来ました。一行と合流したパウロは今度は船でエフェソ沖を通過してミレトスまで行ってしまい、そこから人をやってエフェソ教会の長老たちを呼び寄せています。

さて私たちは今朝から3回に亘りパウロの決別説教から聞きます。自分の顔を(あなたがたが)もう二度と見ることはあるまい、とのパウロの言葉に、長老たちはどれ程不安を覚え彼の死期を悟って悲しんだことでしょう。しかし感傷に浸っている時間はありません。パウロは3年間をかけて建て上げたエフェソ教会をその長老たちに委ねるにあたり彼らへの特別の説教を用意していたのです。彼は自らの伝道観、教会観、聖書観を端的な言葉で語りました。同時に感情も折々の心持ちもありのままに打ち明けています。福音伝道のために共に苦労した同心の友らとの間にパウロは真の信頼関係をちゃんと作り上げていたのですね。心と裏腹なことを言い、自己弁護と忖度と。真実のない世俗の人間関係に嫌気がさす昨今、せめて教会の中では本物の付き合いをしたいと願うのですが…、教会の世俗化は深刻です。パウロは神さまの視線を常に意識していましたから人の目など全く気にならなかったのです。神さまを心から畏れていましたから人からの評価などどうでもよかったのです。「神と富(人)とに仕えることは出来ない」
とイエスさまは仰いました。あなたは???