旧約聖書の最初は天地創造の物語です。その冒頭に、初めに、神は天地を創造された、とあります。私たちが「神」とか「主」と呼ぶのは、天地万物を創り、生きとし生けるものすべてを創り、私たち人間を創り給うたこの神さまです。永遠から永遠に存在される、唯(ただ)お一人の神さまです。この神さまがあなたを「主の聖なる民」「宝の民」とする、とお決めになったと書かれています。

 聖なる民。この聖という字には「清らか」という意味の他に「分ける」という意味があります。神さまによって他の民族から分けられた民。また「宝の民」とも書かれています。これがイスラエルなのです。民族で言えばヘブライ人すなわちユダヤ人です。ではなぜ神さまはユダヤ民族をご自分の民とされたのでしょうか。続けて聖書を読みます。主が心引かれてあなたたちを選ばれたのは、あなたたちが他のどの民よりも数が多かったからではない。あなたたちは他のどの民よりも貧弱であった。

 イスラエルは神さまの目に、他のどの民族よりも貧弱に見えたのです。非常に意味深い言葉です。更に読みます。ただあなたに対する主の愛のゆえに、あなたたちの先祖に誓われた誓いを守られたゆえに、主は力ある御手をもってあなたたちを導き出し、エジプトの王、ファラオが支配する奴隷の家から救い出されたのである。ただあなたに対する主の愛のゆえに。

 ふつうは誰かに心惹かれるのは、相手にこちらの気持ちを惹きつける何かがあるからではないでしょうか。ところがここでは相手は貧弱であったのです。ということは、神さはただただ一方的にイスラエルを愛された、ということでしょう。蓼食う虫も好き好き、などと言います。神さまが何に心をむけられるのかは、人間の思いとは全く異なる、ということかと思います。