マルコによる福音書では、「悟る人」の部分を「御言葉を聞いて受け入れる人たち」と具体的に書かれています。では「悟る人」の「立派な良い心」「良い土地」というのは、どういう状態を指すのでしょうか。

 実を百倍にも実らせるわけですから、日当たりや肥料といったすべての条件が満たされている土地すなわち、み言葉を正しく受け取る知識と知恵、広く柔和な心、研ぎ澄まされた精神のことだろう、つい、そんなイメージを持ってしまいます。ですがそうではなく、良い土地というのは余計なものがない、ただの土を指します。

 石もいばらもない、踏み固められていない、何もない姿。畑を耕す、信仰を豊かにするという事は、特別な資質や能力を持つことではなく、邪魔者を取り除く作業をつづけることなのです。主の前に、何も持たずに歩み出るという事です。そして主のみ言葉を知識として増やす、喜んでただ受け取るだけではなく、柔らかな心で吸収すること。

 何度も聞いたみ言葉であっても、聞くたびに心を新たにして、その意味を考えて向き合う。そして日々の生活の中で、ことあるごとにみ言葉に立ち返り、自分中心の考えから主の方に向きを変え、行動する。そうやってみ言葉を体現していく、そうすることで、心の中の信仰は、深く深く根を張ることが出来ます。その根に支えられることによって、しっかりとキリストと結びつき、困難や誘惑に負けることなく、豊かに実を結ぶことができるようになる、という事なのです。