御使いはハガルに、彼女が耐えられなくなって逃げ出して来たその現場に戻りなさい、と言いました。御使いは、逃げるな、逃げてはならない、と言ったのです。

　神さまはハガルを突き放されたのでも、捨て去られるおつもりでもありませんでした。そうではなくハガルと共に現実のただ中へと帰っていこうとされるのです。彼女は現実の中で絶望し、行く当てもなく現実からさ迷い出てしまいました。神さまはそんな彼女に出会って下さったのです。彼女は神さまに持ち運ばれて「現実」へと帰っていくのです。改めて出かけていくのかも知れません。逃げるな。それは逆説的に、ハガルに逃げ道を備えていてくださるということでもあります。

　今朝の招詞（Ⅰコリント10:13）を思い出してみましょう。御使いはハガルに、女主人のもとに帰り、従順に仕えなさい、と告げました。何の根拠もなく、こう語ったのではありませんでした。あなたの子孫を数えきれないほど多く増やす(10節)。今、あなたは身ごもっている。やがてあなたは男の子を産む。その子をイシュマエルと名付けなさい。主があなたの悩みをお聞きになられたから。（11節）

　み使いには、最も確かな根拠があるからこそハガルを現場へと戻らせようとしたのでした。「あなたは捨てられてはいない。あなたも神さまの祝福の内にある」異邦人のハガルに、イスラエルの神さまのことを語ったのでした。これを聞いたハガルの反応こそ、私たち信仰者であっても聞くべき言葉であり、倣うべき態度であろうと思います。