いよいよイエスさまはヨルダン川の東、異邦人の地へと足を踏み入れられました。そこはゲラサというローマ帝国が支配する町でした。

 ここにおよそ6000もの悪霊に取り憑かれ、人間性が破壊され、人々からは関係を拒絶されて墓場に住んでいた(おそらくそこに監禁されていた)人が居ました。イエスさまを見かけた途端、この人の内に巣くう悪霊たちが激しく反応しました。悪霊たちはイエスさまが「誰」であるかを把握していて、非常に恐れていたからです。

 悪霊たちはその人から出て行き、そこに飼われていた豚の群れに取り憑いたのです。悪霊に憑りつかれた豚たちは、湖に飛び込んで溺死してしまいました。レギオン(軍隊の一個連隊⇒大勢)と名乗らされていた人は正気を取り戻しましたが、土地の人々はそれを喜ぶどころかこの癒しの奇跡を見て恐れ、イエスさまと関わることを拒み「出て行ってほしい」と頼んだのです。けれどもイエスさまによって人間性を回復することが出来たこの人は、イエスさまのお弟子になって伝道の旅に出たいと願い出ました。

 イエスさまはこの願いを退け、彼に証し人の任務を与えられたのでした。自分の生活の場に戻り、その只中で神さまの証し人として立ち続けるようにと、イエスさまはこの人に願われ、期待されたのでした。彼は、家に帰り家族や友人知人など身近かな人々に辛抱強く福音を語り続けたと思われます。伝道がどんなに困難な地であってもこの人は語らずにはいられなかった。誰が、自分を生き返らせて下さったイエスさまのことを話さずにいられるでしょうか。