ところで私たち読者は、病人の癒しの場面で「罪」について議論されている
ことに違和感を覚えないでしょうか。なぜイエスさまは、あなたの病は癒され
た、とは言われなかったのか。実は当時は、病は罪の結果である、すなわち、
病=罪というおかしな論理がまかり通っていたのでした。しかもこの論理は意
図的に仕組まれたものであったのです。この時代、あなたの病気はもう治った
よ、と宣言するのは医者ではなく祭司、すなわち神殿関係者でした。治療や予
防が確立されていない時代でしたから、病人が出るとその人を共同体の外へと
移して隔離する以外、共同体を病気から守る術がなかったのでした。しかも、
共同体からの排斥は、罪人への罰でもあったのでいつの間にか病人と罪人とが
同一視されるようになっていったと考えられます。そして当然のように病人と
罪人、双方に関係する祭司は相応の報酬を得るようになっていきました。更に
それが神殿の収入となっていったのです。