エルサレムの北東およそ700㌖に位置するニネべは、当時全盛を誇って いたアッシリア帝国の首都でした。政治、経済、文化の中心ともいうべき 大都市でした。その民は残虐だと恐れられる一方、人心は堕落し頽廃の罪 に満ちていたようです。神さまは、ヨナに「この町に行って彼らに悔い改めを勧めよ」と仰ったのでした。逃げ出したい気持ちは、分からないでは ありません。鉄兜を被ったイナゴの大軍と呼ばれていたニネベの軍隊に対 する恐れが、ヨナを委縮させたのでしょうか。しかし、彼は預言者なので す。どんなに厳しいと思われる使命にも神さまは必ず伴ってくださる、そ して勝利をもたらされる。それを愚直に信じていくのが預言者ではないで しょうか。それなのにヨナは神さまから逃げたのです。それに彼はニネべ を憎んでいました。その滅びを本気で願っていたのです。アッシリアによって北イスラエル王国が滅亡するのはヨナの時代から40年ほど後のことで すが、この時既に敵の侵略が始まっていたのでした。祖国の敵の救いを何 で願わなければならないのか。もっともな理由です。またヨナは考えたで しょう。もしもニネべの人々が悔い改めたとしたら神さまはきっと彼らを 祝福される…。それは彼にとって、断じて認められることではありません でした。異邦人が救われるなど、彼にとってあってはならないことだった のです。ヨナはこれ見よがしにニネべとは正反対の方向にある港町ヤッファに下り、大枚をはたいて船賃を払い人々に紛れ込んでタルシシュへと向 かったのでした。逃げるが勝ち!などと本気で思っていたのでしょうか。
