そのとき、占星術の学者たちが東の方からエルサレムに来て言った2:1b-2a

東の方の国とは古代バビロニア帝国のことです。その昔、エルサレムの主だった住民のほとんどが連行されて行き、ユーフラテス川の支流付近に開拓民として入植させられたバビロン捕囚。イスラエル民族最大の危機をもたらしたのがこの国だったのです。そこは甚だしい偶像礼拝の国でもありました。捕囚民たちは生活苦だけでなく宗教的にも、唯一神信仰に対する異民族の侮辱に耐えなければならなかったのです。

マタイの福音書に少し遅れて成立した「ヨハネの黙示録」という本には、滅び行く世界の都ローマが「大淫婦バビロン」という、いわゆる隠語で語られているところからしても、新約聖書時代のキリスト者たちがどれ程バビロンを忌み嫌っていたか、憎んでいたか、想像に難くありません。

ところがそのバビロンの地に、救い主の誕生を星の研究によって予見する知識人たちが出現するのです。彼らは夜空の星を観測研究し、そこに現れた不思議な現象とユダヤ教の聖書、彼らにしてみれば異教徒の聖典であるにも拘わらずその中の預言とを合致させました。そしてメシアの誕生を確信し、そのことを確かめるために、全財産をはたいてまで、はるばるとエルサレムまで旅をして来たのでした。神さまのご経綸の何と深いことでしょうか。神さまは、当時ユダヤ人の間で厳しく禁止されていた占い、すなわち占星術を生業とする異邦人の学者たちの言動によって、ご自身の独り子の誕生を全世界に知らしめる、というご計画を実現なさったのでした。