ナインという町に住んでいたやもめの一人息子が死んでしまいました。町を出ようとした葬列と、カファルナウムからやって来たイエスさまの一行が町の門のところで出会った。イエスさまはやもめの悲嘆に暮れる様子に心を動かされ死んだ息子を生き返らせられました。これがお話の全部です。テーマは死者の甦り。これを信仰的にどう読み解けばいいのでしょうか。
奇跡を行われる時イエスさまは大抵「あなたはどうして欲しいのか」「あなたは治りたいのか」とお尋ねになります。でもこの場面では誰も信仰的な態度を取っていません。イエスさまの一行とすれ違っただけでした。一度死んだ者が生き返るはずがないと誰もが諦めムードになっていたと思われます。
イエスさまは、死んだ若者にでなくやもめであった母親に深く同情されました。そして死者を甦らせる奇跡を起こされたのです。奇跡のモチベーションはご自身の感情だったのです。ここに1つの希望があるように思います。
しかし愛する者を天に送らねばならなかった人にとっては、自分の祈りは聞かれなかったとガッカリする場面なのでしょうか。そうではありません。イエスさまは人には絶対に太刀打ちできない死に勝利された方、そして永遠の命を持っておられる方です。この方を見上げて心から期待していく時にその人にとって最善の奇跡が起こされていくのです。