「訪問の願い」
                                                   ローマの信徒への手紙1章8-15節
 ローマの教会はパウロが設立したのではない唯一の教会でした。様々な物語を背
景に持つユダヤ人や異邦人がローマの街を出入りする中からキリスト者が自然に集
まり家の教会へとなっていったようです。その時代、世界はローマ、ローマは全世
と言われた強力な帝国の中心地にキリスト教会があることを知ったパウロは、とて
も感動し喜びました。そして何度となくローマに旅しようとしますが、諸事情が許
しません。パウロは見たことのないローマの街の教会に思いを馳せつつ、会ったこ
とのない信徒たちに手紙をしたためます。手紙の定型に従って書こうとしますが、
つい、挨拶文に自己紹介を書き込み、前書きに「会いたい」「そちらに行きたい」
と、熱烈な気持ちや訪問の訳までも書き入れます。当時紙やインクはとても高価で
したから手紙文は簡潔でかつ情報満載。パウロは手紙の中心的主題までも前書きで
披露しています。方や手紙の受け取り手は、ローマ教会の信徒たちはもちろん周辺
に住むキリスト者にも渡されました。手紙は回し読むのが普通だった頃のお話です。
 パウロは前書きの最初に、イエスキリストの名前によって祈っている、と書いて
います。私たちも祈りの最後に「イエスさまの御名によって」、私であれば「イエ
スさまのお名前で」という言葉をつけます。自分達のお祈りを、仲保者(取り次ぎ)
(取り次ぎ手)として献げますという意味、もう少し期待するならこの願いが叶う
ようどうかイエスさまが神さまに仰ってくださるように、でしょうか。今は仲保者
は世界に唯一人イエスさまですが、宗教改革が起った16世紀ごろの教会(カトリッ
ク)ではマリアや聖人たちの名前によっても祈りが献げられていたとのことです。