人はいろいろな理由によりで故郷を失います。今日、人々は都市化現象の結果、故郷を失いかけています。それは外的現象、つまり近代化の結果です。また人は内的原因からも故郷を失います。周りの、郷里の人間関係です。「血は水よりも濃い」と言われますが、逆にそれだからこそ、郷里の人間関係は難しいと思います。身近な者ほど、血をもって血を洗うといった、みにくい争いを繰り返すから、いきおい故郷の人々と衝突します。「預言者は、自分の郷里や自分の親族、自分の家以外のところで貴ばれるものです。」という、イエスの言われた言葉が真実となるのです。この地縁血縁の中では、神を中心とした、新しい人間関係は育ちにくいのです。明治の時代、キリスト者は「日本古来からの忠義、孝行の徳にもとる」と言われ、いろいろ迫害を受けました。そこでは古い封建的道徳が禍いして、神に似せて創造された人間の姿が見えないのです。イエスキリストを中心とした、新しい人間関係は、地縁血縁を越えて人間を兄弟姉妹としてみるのです。そこでは神の国を中心とした新しい人間関係が、つまり隣人愛が育つのです。
預言者は故郷では受け入れられない。その時には無理に争うことは避けなければならないでしょう。ここにも真理があります。真理を大切にする人は無用な争いをしないで静かに去るのです。
私たちは家の戸はいつも開けていたいものです。