遂に!パウロがローマに旅立つ時が来ました。彼は皇帝直属部隊の千人隊長預かりの身となり、他の囚人たち、ルカやカイサリアの兄弟たち、またマケドニア人のアリスタルコも共に地中海を回遊する船に乗ってカイサリアから船出したのです。千人隊長は終始パウロに好意的で、シドンで船を下りて友人たちと交わりの時を持つことを許可してくれました。パウロが二度とパレスチナの地を踏むことはないことは誰の目にも明らかでしたから、この配慮はとても有り難かったと思われます。
シドンを出てからの航海は波乱万丈でした。もとより地中海を航行するのに適さない期間に入りつつあった上に航海に長けたパウロの提案が退けられて無理な船出をしたために暴風に襲われて難破してしまったのです。乗船者たちは死を覚悟するまでに希望を失って食事も喉を通らない有様…。
そんな人々をパウロは励まし、天使から告げられたことを語って力強く信仰を証ししました。パウロは神さまの自分に対するみ心を知っていたので、自分がこの航海で死ぬことはあり得ないし一緒に航海するあなた方の命も自分に任されている、だから「元気をだしなさい」と。
船は2週間もの間暴風の中を漂ったのちマルタ島に辿り着きました。ここでもいくつかの事件が起りましたが人の思惑はことごとく失敗に終わり全員の命が守られたのでした。人の心には多くの計画がある。しかし主の御旨だけが堅く立つ。パウロをローマに連れて行くという主のみ心の故に乗船者全員の命が保たれたのです。