夏は来ぬ

1 卯の花の匂う垣根に ほととぎす
早やも来鳴きて 忍び音漏らす 夏は来ぬ

※卯の花(うのはな)別名うつぎ 落葉低木 ※忍び音(しのびね)ひそひそ声

2 五月雨の注ぐ山田に 早乙女が
裳裾濡らして 玉苗植うる 夏は来ぬ

※裳裾(もすそ)衣服の裾  ※玉苗(たまなえ)苗代から田圃へ移し替える苗

3 橘の香る軒端の 窓近く 
蛍飛び交い 怠り諌むる 夏は来ぬ

※橘(たちばな)柑橘類の一種 ※軒端(のきば)屋根の先端の端

4 樗散る川辺の宿の 角遠く
水鶏声して 夕月涼しき 夏は来ぬ

※樗(おうち)栴檀科の高木 ※水鶏(くいな)ツル目クイナ科の鳥 泳ぎも上手

5 五月雨や 蛍飛び交い 水鶏鳴き
卯の花咲きて 早苗植え渡す 夏は来ぬ

※五月雨(さみだれ)五月の長雨 梅雨  ※早苗(さなえ)玉苗に同じ