お正月の思い出

 私的な内容で恐縮です。子どもの頃はお正月は大きなイベントでした。分けても2日の午後、父の長兄の家に親族が集まるのが子どもの私にとっても楽しみでした。

 食事が終わると誰彼なく部屋を出て散らばり遊んだり歓談するのが習わしの中、伯父と伯母と私の父、兄弟3人は決まって炬燵に集まりました。そして伯母の昔語りを聞くのです。いつの頃からか小学生の私もその中にいるようになりました。

 叔母は軍人の妻で満州で終戦を迎え、幼な子2人を連れて引き上げて来たとのことでした。その困難と苦労を低い声でほつほつと語るのです。シナリオでもあるかのように順序だててゆっくり語るので小学生の私にもよく理解できました。感情を込めない淡々とした語り口は返ってその大変さを際立たせました。

 毎年同じ話だったのでしょうが私は引き込まれて涙さえこぼしたほどでした。伯父も父も黙って目を閉じて聞いていました。聞く度ごとに心から「戦争は絶対嫌だ」と思ったのでした。