「ここに愛がある」
                       ヨハネの手紙 一 4章7-16節
 待降節第2主日は、ヨハネの手紙から御言葉を聞きます。ヨハネは12弟子の一人で
その福音書の中に「イエスの愛しておられた弟子」などの表現によって度々自らを登
場させています。福音書の書き出しといい黙示録といい(「ヨハネ」と名のつく書物
の筆者をこのヨハネとして、の話ですが)この人の文章は魅力的です。
 手紙は3つ書かれました。第一の手紙は自らが所属するヨハネ共同体(…と呼ばれ
ていたと思われます)の兄弟たちに宛てて。第二の手紙はその共同体の女性たちと子
どもたちに宛てて。そして第三の手紙は彼の敬愛するガイオ(この人は小アジアにあ
ったペルガモンの教会の責任を負っていたと思われます。)に宛てた私信です。
今朝取り上げる第一の手紙の4章には、「互いに愛し合いましょう」「神は愛です」
「わたしたちが神を愛したのではなく、神が私たちを愛して、わたしたちの罪を償う
いけにえとして、御子をお遣わしになりました」「ここに愛があります」といった、
しばしば単独ででも取り上げられるようなことばが並びます。読むだけでも神さまの
愛が心に染みてくるようです。今朝のテキストのみを読む限りではヨハネ教団はさぞ
や平和で暖かな共同体であったのだろうと思われるのですが、実際は真逆ともいうべ
き状況の中にありました。小さな信仰共同体は外部からユダヤ教徒たち、ローマ帝国
からの迫害を受けており、内部では異端が入り込んで信徒たちは大混乱。彼らが去っ
て行ったあとには疲労と傷跡と世俗の腐臭が残されたのです。諦めモードに入ってし
まった信徒たちを癒やし励まし何とか再び立ち上がらせて、正しい信仰の道に導き返
すために、ヨハネはこの手紙をしたためたのでした。

せっきょう・まえせつ2018.12.9