ルカの癒しの物語、3話目です。新共同訳聖書では「重い皮膚病の人の癒し」という小見出しがつけられています。全身を覆う重篤な皮膚病は、身体的のみならず社会的、宗教的多大な苦痛を罹患した人とその家族に与えました。現代ではこの病気が具体的に何という病気を指すのか定まってはいませんが、外見に現れる症状からどの文化圏でも非常に恐れられ、人々に畏れと無知による偏見を生じさせたと言われます。分けても旧約聖書に記されているこの病に関する規定は、罹患者を罪人と断定するほか共同体居住区からの追放(宿営外での隔離)、接触の禁止など著しく人権を侵し差別を生むものとなっています。ルカの物語に登場する、この病に罹患した人は強い信仰の持ち主であったようで、イエスさまが近くの町におられることを知ってそこへ入っていきます。これは清浄規定に違反する行動でしたから正にこの人は命を賭けてイエスさまに会おうとしたのでした。「主よ、御心ならば、わたしを清くすることがお出来になります。」この言葉には控え目ながら癒しの確信が表されています。私が治ることを主よ、あなたが望んでくださるなら私は必ず治りますと言っているのです。これにイエスさまはお応えくださいました。おそらく意識的に距離をとっていた罹患者にイエスさまの方から近づき、手を差し伸べてその人に触れ完治を宣言されたのです。たちまち病は癒えたとルカは伝えています。イエスさまは今までどんなにか苦しく辛く、寂しく悲しい日々を送って来たであろうこの人を全人的に癒されたのでした。そのあともこの人が一刻も早く共同体に戻れるように、祭司の所に行かせて完治の証明をするように配慮されたのでした。