神さまは洪水を止められました。その理由は水が地表を完全に覆いノアの家族を除く地の面にいた生き物はすべて、人をはじめ、家畜、這うもの、空の鳥に至るまでぬぐい去られたからでした。

 8章は洪水後の物語の始めの部分です。説教では語らない1節から12節についてここで触れます。天の上の水と地の下の水とが一度に地上で合流したために、地は天地創造以前の混沌の状態に再び戻ったかのようであったと思われます。命が完全に拭い去られた無機質の世界は希望がないために一層悲惨であったかも知れません。

 150日が過ぎ、水が減って箱舟はアララト山の上に止まった(8:4)。アララトとはメソポタミア碑文に出て来るウラルトゥと同定されます。世界で最も高い地域と言われます。神さまは洪水のあと最初に水面から現れた地面に箱舟を置かれた。そこがアララト山頂でした。

 ノアは箱舟から先ず烏を、次に鳩を放ちます。その時代から烏が賢い鳥であることは認識されていたのでしょう。水が乾くのを待って出たり入ったりした(7)。烏が自らの使命を心得ていて偵察に出かける時を見計らっている…かのようです。

 次に放たれたのは鳩でした。鳩は賢い鳥とは言えませんが飛翔する姿が美しく帰巣本能に優れています。一度目、止まる所がなかった鳩はさっさと帰って来ました。7日ののち再び放たれた鳩はオリーブの葉をくわえて帰って来ました。鳩が平和のシンボルと言われるのは聖書のこの記事に由来すると言われます。

 因みに紙巻たばこ「ピース」という銘柄の箱のデザインは、下向きの鳩が3枚の葉をつけたオリーブの枝をくわえているというもの。日本のたばこの箱に聖書物語が描かれているのです。面白いですね。