「パウロが異邦人を連れ込んで我々の聖なる神殿を汚している」と群衆を扇動して暴動を起こしたのは、巡礼のために町に帰って来ていた離散ユダヤ人たちとエルサレムのユダヤ人たち、そしてユダヤ教徒たちでした。いよいよ収拾がつかなくなった頃、ローマ軍のエルサレム駐屯部隊が介入して来てパウロは逮捕されてしまいます。兵営に連行されようとした時、それまで沈黙を守って来たパウロが弁明の機会を与えてほしいと千人隊長に申し入れたのです。今朝のテキストは、パウロがエルサレムの住人であるユダヤ人とユダヤ教徒たちに語った言葉です。パウロはまず、自分がれっきとしたユダヤ人であり熱心なユダヤ教徒で、しかもキリスト者を迫害する者であったことを告げます。そしてその上で、ダマスコ途上でその身に起こった不思議な出来事を語り始めるのです。イエスさまを迫害していた自分がイエスさまと出会った瞬間、この方を宣べ伝える者へと変えられたこと、そこにはアナニアの大きな導きがあったこと、そしてイエスさまから「異邦人に福音を伝えるために、エルサレムから出ていきなさい」と言われたこと、を。

 パウロはなぜ自分の回心の証しを敵対するユダヤ人たちに語ったのでしょうか。ユダヤ人たちはメシアの到来を何百年間も待ち続けてきました。しかし彼らが待ち望んだメシアは、ユダヤ民族をローマの圧政から救い出す英雄であって神さまが人類を救うために遣わされた方ではありません。パウロは彼らに真のメシアを伝えようとします。